あしたばの会とは

病気療養からの社会復帰

全国健康保険協会(協会けんぽ)による「現金給付受給者状況調査報告(令和3年)」によると、協会けんぽにおける令和3年10月支給の傷病手当金のうち、支給期間541日以上が3,632件で、単純計算すると協会けんぽだけでも年間4万人を超える就労世代が1年半を超える療養を余儀なくされていることになります。また支給総数154,897件の平均支給日数は150.32日(約5ヶ月)にのぼり、長期の病気療養が誰にでも起こりうる身近なリスクであることが伺えます。

ところが病気寛解後の再就職というのは、特に療養期間が長期にわたるほど困難を伴っているのが現状です。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構による「病気の治療と仕事の両立に関する実態調査(2017年)」によると、病気療養後に就職活動をした人のうち79.8%が再就職に成功してはいるものの、求職活動に7か月以上要した人が2割を超え、さらに正規雇用に至った人は41.9%にとどまっているのです。

健康に過ごしている人には「病気が治ったのなら働けばいい」くらいの認識かもしれませんが、実際には体力の回復だけをとっても想像以上の時間と努力を要します。
また何より、一度レールから外れると元には戻りにくい日本社会を目の当たりにして、はじめて「社会復帰とはこんなに大変なことなのか」と途方に暮れる人も少なくありません。

病気療養後の求職活動期間 ・1ヶ月ほど31.5% ・2~3ヶ月ほど30.8% ・4~6ヶ月ほど17.3% ・7ヵ月~1年6.9% ・1年越え13.5% 7ヵ月以上要した人が2割超

「就職・再就職できた」者の就職先の就業形態 ・正社員41.9% ・派遣社員21.3% ・パートアルバイト28.4% ・契約社員8.4% 正社員での再就職は約4割

病気の治療と仕事の両立に関する実態調査より

あしたばの会がめざすこと

病気後の再就職を助ける公的制度は、例えば障害者の就労支援や雇用制度などと比較しても十分とはいえません。
また月単位・年単位での療養を経験すると、体力だけでなく失った自信をとりもどすのにも大きな苦労を伴います。
本当にもう一度働けるようになるのかという不安と闘い、どうすれば前に進めるのかを日々悩みながら、それでも必死にがんばっていこうとしているひとたちを、私たちは同じ社会に生きる仲間として支えていきたいと考えています。

例えば治療中の経済的支援は国や行政が積極的に取り組んでおり、がんや難病などの患者さんを支える支援団体も幅広く活動されています。
またハローワークは「治療と仕事の両立支援」などの就職に関する支援に取り組んでおり、各地域の社会福祉協議会では生活面を含めた様々な支援を受けることができます。
あしたばの会はこれらの機関や団体の間を繋ぎながら、病気療養後の社会復帰にむけた支援体制の一翼を担い、病気になっても安心して暮らせる世の中づくりに貢献できればと考えております。

活動内容

社会復帰を支援する活動

  • 利用できる公的制度や将来への不安など、
    病気療養中のさまざまな悩みや相談をお受けします。
  • それぞれの事情にあわせた社会復帰(就労)の方法をいっしょに考え、
    就職活動をサポートします。
  • 社会復帰に向けて十分に自信と体力を回復するために、自宅でできる仕事の提供や資格取得の支援などをします。

広く知って頂くための活動

病気になっても仕事を続けられるのが一番ですが、病状やその他の事情により離職せざるをえなかった人はたくさんいます。
寛解後スムーズに復帰できる社会を実現するために、まずはそのような人が身の回りにもたくさん存在すること、またそれぞれどんな苦労をされているのかということを広く知っていただきたいと考えています。
あしたばの会は、内閣府が運営する「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」において「病気療養後の社会復帰」をテーマとする分科会を設置し、課題の検討や知見の共有、異分野連携、社会への提言等を図っています。(令和5年度)

元気に復帰支援ネットワーク

病気療養後の社会復帰を社会全体で支えていく仕組みとして、「元気に復帰支援ネットワーク」への参加を呼び掛けています。
これは多くの企業や団体の参加により、寛解後の再就職率を100%にしようという互助的な取り組みです。
またこの取り組みをきっかけとして、将来的には障害者支援に並ぶような公的な支援制度の制定をめざしていきます。